カテゴリ:餃子を食べにいく話( 5 )

2008年 11月 09日
「餃子を食べにいく話-完」
まずもってその分量に驚いた。
白湯も酸辣湯もどんぶりになみなみと入っており1つでも相当な量である。
さらに驚くのは主役の餃子の大きさ。
手のひらくらいあるんじゃないかという存在感、そして少し厚めの皮の中に具がみっちしと詰まっている。

広東地方をはじめ、中国南部では餃子は「主食」扱いだそうだが、それが実感として理解できるサイズである。そう他のヒトが食べていた麺だと思っていたどんぶりは実は餃子そのものなのであった。
2つくらいは食えるだろうと安易に頼んでしまったが、これは相当気合を入れないと完食できなさそうである。

e0136330_2511365.jpg
「招牌山東餃子」


まずは王道である白湯の招牌水餃子からトライ。
厚めに思えた皮だが実際に食べてみるとそうでもない。つるんとした皮の歯ごたえが、がっちり詰まった具とマッチしていい感じ。噛むとじゅわっと肉汁が溢れてくる。具のほうも豚挽き肉、羊挽き肉、にら玉などバリエーションに富んていて6種類それぞれが美味い。

特に美味いのはやっぱりウワサのトマト餃子。
ジューシーなトマトの果肉と挽き肉のタッグはびっくりするほど餃子に良くマッチしている。トマトは日本のものとは品種が違うのかもしれない。水分が少なくて味が濃い感じのものだった。
次にこのトマト餃子だけを酸辣湯に入れた酸辣蕃茄鮮肉餃子を食らいつく。酸辣湯の中にあってトマト餃子の爽やかさは際立っていて、これまたとても美味かった。

e0136330_251533.jpg
「酸辣蕃茄鮮肉餃子(加河粉)」


それにしてもトマトの餃子とは最初に考えたヒトは大したもんだなぁと感心したのだけど、よく考えてみればトマトと挽き肉の合わせワザというのは、中華に限らずイタリアンを筆頭に日本料理でも当たり前のように使われている王道の組み合わせでもある。
それが餃子になっただけでこんなに新鮮に感じるということは、むしろぼくの頭の中の餃子の具というものに偏見があっただけなのだろう。「食」には果たして国境があるのかないのかよく分からない。

どんぶり二杯分12個の大餃子だったがあっという間に食べてしまった。
最後の頃はさすがに腹が苦しかったが、美味かったので完食できた。さすがはウワサの店だけあるなあと感心。
うーむと唸りながら顔を上げると隣のテーブルの小さな男の子と目が合った。
彼は、デジカメで写真を撮りながら2つのどんぶりに夢中で顔を突っ込むガイジンを、揺るぎなく不審者を見る視線でじっと見つめていた。

e0136330_249959.jpg


店を出ると、路地裏に大きなにれの木があって木陰を作っていた。
地元のヒトだろう、数人の女性がベンチに腰掛けて思い思いにくつろいでいる。
その光景を見ていたら、なんだか発作的な遠出だったけどここまで来て良かったなと唐突に思った。なんでもない風景だけどやっぱりここにしかない「時間」というものがあるのだ。餃子店もちょっと埃っぽいこの街も全部含めて。

ぼくはパンパンに膨らんだ腹をさすりながら、うりゃと小さく呟いて和泰街の通りを歩き出したのだった。
[PR]

by jellyfishcafe | 2008-11-09 01:14 | 餃子を食べにいく話
2008年 11月 05日
「餃子を食べにいく話-4」
(前回までのあらすじ)
『餃子を求め香港シティを後にしたJellyfish。辿りついたボーダー近くの街、粉嶺でようやくモンダイの店、山東餃子店を発見。意気揚々と店に乗りこむJellyfishであったが・・・』

午後も1時を過ぎているので、店内はさほど混雑はしていなかった。
厨房に2人と店内に1人、エプロンをしたおばちゃんがいて、ぼくの顔を見て何か言ったがまったく分からなかった。
もちろん広東語は分からないのだがどうも普通話のようだ。でもなんとなく「どこでも好きな席に座りな」と指し示しているのがわかった。

e0136330_2141157.jpg


隅の窓際の席に座って、さてさてとメニューを見てびっくり。
A4くらいのメニューにズラリと餃子メニューが並んでいる。ざっくり数えてみても40近くはありそうだ。
香港の茶餐廳などにはえらくメニューの数が多いところもあるが、あれはミルクティーからチャーシュー飯まで様々なものを出すことによるメニューの多さである。餃子だけでこの数はなかなかにスゴい。恐るべし山東餃子店である。

すでに猛烈に腹が減っているのでどれを見てもうまそうな文字に見えてくる。
目を皿のようにしてメニューと格闘した結果、「招牌山東餃子」と「酸辣蕃茄鮮肉餃子」そしてビールを注文した。
「招牌」というのは、茶餐廳や甜品屋などでもよく見かける文字で、メニューの場合、一杯に何種類かの具がまとめて入ってますという意味になる。つまりこの場合は「山東餃子店☆欲張りセット」というような感じ。
メニューのバリエーションがやたらと多い香港では、この「招牌」は旅人が覚えておいて損はない言葉かもしれない。

e0136330_2253395.jpg


そして、もう一つは「蕃茄」(トマト)の餃子。
サイトで店を紹介していたキャセイのクルーも、この蕃茄鮮肉餃子を一番に推していて訪れたら是非食べてみたいと思っていたものだ。こちらのスープは白湯ではなく、ぼくの好きな河粉(平打ち麺)入りの酸辣スープを選んでみた。

注文を終えてほっと一息。
なにしろ言葉の通じないところで食べ物の注文が出来たときほどホッとすることはない。
あの安堵感というのはどこか生命に直結したもののように思う。つまりメシにありつくことが出来たヒトの食べて生き長らえることができる安堵感なのではないだろうか。それくらい心の底からホッとする。
そんなおかしなことを考えながら、ふと他の人たちはどんな餃子を注文しているのだろうということが気になって周囲を見回してみた。がしかし、パッと見たところ麺類を食べているヒトが多いようだった。

そして、待つこと数分。
ぼくの目の前に大きなどんぶりが湯気をたてながらドカンと置かれたのだった。
(つづく)
[PR]

by jellyfishcafe | 2008-11-05 01:32 | 餃子を食べにいく話
2008年 09月 15日
「餃子を食べにいく話-3」
粉嶺駅の改札を抜けたぼくの目に飛び込んできたのは、巨大な高層マンション群だった。
大古あたりの風景にちょっと似ているがこちらは殆どが同じデザインのマンション。おそらく同じ時期に一斉に建てられたのだろう。これだけの規模のものを足元から間近に見たのは初めてである。
駅の構内の普通っぽさには拍子抜けしたが、やはり粉嶺は千葉県柏市とは違うのであった。(当たり前)

e0136330_0413451.jpg


それはともかく。
目的は餃子である。
もう昼も過ぎて腹も減っている。マンションに見入っている場合じゃないのだった。
早速モンダイの餃子屋に向かうことにする
店があるのは駅からちょっと離れたところにある和泰街という通り。地図で見る限り、歩くにしては少しばかり距離がありそうなのでタクシーで行くことにした。

e0136330_042862.jpg


粉嶺のタクシーは緑色のツートンカラーだ。
ちなみに香港のタクシーは地区ごとにカラーリングが違う。
シティは赤×白だが、そしてここ粉嶺がある新界地区はグリーンと白のツートンカラーだ。
日本的感覚で言うと赤×白よりもむしろこっちのほうがタクシーらしいカラーリングだと思う。
(この色法則はタクシーに限らず乗り合いのミニバスなどでも同じ)

タクシーに乗り、運転手のおっちゃんに餃子屋の住所を書いたメモを見せる。ぼくの顔と差し出した紙きれをジロリと見たおっちゃんはすぐに分かったようだった。
そしていくつかの住宅通りや職人街を通り抜けて車に揺られること数分。
歩いていくには少しばかり遠く、車で行くには少々もったいないような絶妙の距離感のところにあるその通りのほぼ真ん中あたり。ローカルな空気漂うところにその店はあった。

e0136330_0423628.jpg
「山東餃子店」


友よ。これがモンダイの「山東餃子店」だ。
失礼ながらもっと小汚い店を想像していたのだけど、思いがけず店はキレイだった。
店構えも普通の粥麺屋とかとあんまり変わらない。

香港にはもちろん餃子を出す店も数多くあるのだが、それは色んなメニューの中に餃子もありますというのが普通で、「餃子店」と銘打った店は意外と少ないように思う。その点、これだけ正面切って「餃子店」の看板を掲げるくらいなのだから、やっぱり餃子に相当の自信があるのだろうなと思わせられる。
ぼくは内心のコーフンをおさえて、若干伏し目がちに「もうギョーザなんて食べ飽きたもんね」というような顔つきで店のドアを開けたのだった。
(まだつづく)
[PR]

by jellyfishcafe | 2008-09-15 00:29 | 餃子を食べにいく話
2008年 09月 05日
「餃子を食べにいく話-2」
九広鉄路(KCR)の車両は意外にも明るくてキレイだった。
何の根拠もなく、香港MTRより古い車両をイメージしていたのだが大きな間違いだったらしい。
考えてみればこの路線は、今や中国経済の要衝の一つである深圳と香港をダイレクトに結ぶ一大メジャー路線なのだ。それが薄汚れた車両であるわけがないのである。

e0136330_22512285.jpg


香港MTRや日本の車両との違いは車載ディスプレイが真ん中にあるということくらい。
仕切りがなく大きな間口で繋がっている車両間の感じや大きな窓など、どこかで見たなあと思ったら仙台市の地下鉄に似ているのだった。

そして尖東駅から沙田競馬場のある"馬場"や香港大学のある”大学”(駅の名前がダイレクトすぎ)といった駅を過ぎて、海沿い山沿いを列車に揺られること約40分。
ぼくの乗ったKCRは昼過ぎの粉嶺の駅に滑り込んだ。

e0136330_22514853.jpg


初めて降り立った粉嶺駅はこれまた想像よりずっと大きかった。
線路をまたぐ形で建てられた駅舎の構内は広くてショップなども多くあり、連絡通路をたくさんの人が歩いていた。
なんだかこれもまたどこかで見たような景色だなと思ったら、JR常磐線の柏駅にとてもよく似ているのだった(笑)
これが中国本土の目と鼻の先にある駅だとはとても思えない。

e0136330_22521682.jpg


そんなわけで異国の全く初めての場所に来たのにどこかそのへんの知っている街にフラリと来たかのような、全体的になんとも実感のない気分のままぼくは粉嶺の駅を出たのだった。
(つづく)
[PR]

by jellyfishcafe | 2008-09-05 23:13 | 餃子を食べにいく話
2008年 08月 31日
「餃子を食べにいく話」
きっかけはキャセイ・パシフィック航空のサイトだった。
CAやグランドクルーなどがおすすめスポットを紹介しているページがあり、その中の一つにふと目が止まった。

現地の香港人職員がローカルな餃子店を紹介していた。
一番のお気に入りだというその店の紹介文には、読んでみるとどれも大変ウマそうな餃子の話が踊っている。
これは是非行ってみようとと思ったのだが、書いてある住所を読んでも場所がよく分からない。地図で調べてみるとそこは香港の郊外もド郊外。新界地区のずっと北のほうだった。
香港のシティからだと、九龍と中国広州を結ぶ九広鉄路(KCR)に乗って大陸に向かうこと40分ほどの街。つまり早い話、ほとんど中国区境に近い街にその餃子屋はあった。
街の名前は「粉嶺」(Fanling)。

e0136330_272779.jpg


マトモに考えるとそんなに遠くまで餃子を食いに出かけるなんて実にアフォらしい話なのだが、この時は「KCRに乗って行ったことのない街へ行ってみたい」という思いと、「こてこてローカルなウマい餃子を食べてみたい」という思いが、ぼくの中でがっちりと握手を交わしたのだった。
というわけで、香港滞在中のある晴れた日。
ぼくはその街を目指してKCR尖東駅から九広東鉄の列車に乗り込んだ。
(つづく・・・)

注:九広鉄路(KCR)は現在では香港鉄路公司(MTR)に吸収合併され、香港MTRの1路線となったがここでは当時のままKCRと表記。
[PR]

by jellyfishcafe | 2008-08-31 01:40 | 餃子を食べにいく話